バラ [Rosaceae Rosa]

基本情報

学 名Rosaceae Rosa
植物分類バラ科バラ属
園芸分類落葉, 常緑, 半落葉の低木あるいはつる性木本
肥 料植付け時に元肥, 四季咲き性のあるバラは開花のたびごとに追肥, 1月~2月に寒肥, 秋にマグネシウム補給のため苦土石灰, 鉢植えは元肥と寒肥は与えない
水やり土の表面が乾いたらたっぷり
原産地北半球の寒帯, 亜寒帯, 温帯, 亜熱帯に天然分布

バラの歴史に学ぶOLG

バラ属の誕生

ナニワイバラ [Rosa laevigata]

ご存じのように、バラは古くから人が広範な種間交雑を行ってきた歴史を持ちます。
その為なのでしょうか、現存するバラのDNAから辿る祖先の解明は議論の多いもののようです。
それでも、少なくとも3,000万年前までには、バラ属は誕生したと考えられるそうです。
バラは、人間より遥かに遥かに地球上の先輩。

原種 [Species] と呼ばれる自生種は殆どが北半球に分布し、花弁は5枚、春の一季咲きで、シュラブや、つるバラが多いようです。
庚申バラという歴史に大変革を与えた原種は四季咲きですが、その仲間にも一季咲きがあるとか。

この庭のナニワイバラ [Rosa laevigata] も代表的な原種のバラ。
花弁は5枚で4月から咲き始め、この庭で唯一の一季咲き、3m程のつるバラです。
花が咲き終わると、棘で覆われたローズヒップが膨らみます。
棘は鋭く、実を守ろうとしているのでしょうね。暫くすると素手で取り除くのが困難な程。
そこに、自生できる繁殖力の高さが見られます。

オーガニックでバラを育てる可能性

野に咲く原種は、世界中で150~200種が知られているそうです。
日本に自生する原種もあり、例えば、ノイバラ [Rosa multiflora Thunberg] は、沖縄を除く日本全国で見られるバラ。
multifloraは多数の花を意味し、このバラとの交配から、後のバラに房咲き性という性質が付与された有名なバラだそうです。
自生する原種を親として園芸品種が生まれたのですから、原種はもちろんのこと、バラをオーガニックで育てる可能性を探りたくなります。
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オーガニックで育てるお手本は?
原種のバラが自生している環境こそ、良い手本でしょう。
ノイバラは林や河原などで見られ、印旛沼畔や奥多摩の川原などで群生しているようです。
そこは、自然の循環の中で出来た堆肥が豊かで、微生物が活発に活動している環境だろうと容易に想像できますね。

近年、人の腸内の100兆~1,000兆個もの微生物のバランスが、健康の要だと解りはじめ、腸活?菌活?をしている方も多いのではないでしょうか。
人間もバラたちも、微生物の活動を基盤とした環境で進化し、この地上に誕生した生命。
この庭でも、微生物を意識して、OLGを目指したい。
それにしても、首都圏は道も舗装され、利便性は高いものの、何とコンクリートに囲まれた環境なのでしょう?
だからこそ、この小さな庭を緑いっぱいに満たして、微生物も育てられたらと思います。庭の菌活ですね。

オールドローズへ

1867年にフランスの Guillot によって作出され、後にハイブリッド ティー [Hybrid tea] 系統1号に認定されたラ フランス [La France] 以降のバラをモダンローズ [Modern rose] と呼び、それ以前に作出された系統のバラをオールドローズ [Old Rose] と総称するのだそうす。
赤バラの祖のガリカ [Gallica Rose]、白バラの祖のアルバ [Alba Rose]、百枚の花弁を意味するセンティフォリア [Centifolia Rose] や、ダマスク香で知られるダマスク [Damask Rose] などがオールドローズの中でも古い系統。
オールドローズは原種同様に丈夫なバラで、無農薬や低農薬で育つ品種と考えて良さそうなバラなので、OLG!ですね。

オールドローズの大半はつる、または半つる性。枝はしなやかなで誘引しやすい品種が殆ど。
古い系統ほど一季咲きで、花弁の多い優雅な花形と豊かな香りを持つものが多く、クラシカルな趣。

四季咲きのオールドローズへ

ホワイト ドゥシェス ドゥ ブラバン [White Duchesse de Brabant]

オールドローズの中で、唯一秋に返り咲くロサ ダマスケナ ビフェラ [Rosa damascena bifera] という品種をご存じでしょうか。
別名キャトルセゾン [Quatre saisons]、フランス語で四季を意味するバラ。
返り咲き性はあまり強くないのだそうですが、他に返り咲く品種のない当時のヨーロッパでは珍重されたことでしょう。

そこに、18世紀の中頃、中国から良く咲く四季咲きの庚申バラ [Rosa chinensis] の系統がもたらされました。
中国では、既に唐の時代にはバラの園芸品種が作られていたようで、チャイナローズ [China Rose] 系統で知られています。
中でも強い四季咲き性のオールドブラッシュ [Rosa Chinensis ‘Old Blush’] やロサ キネンシス センパフローレンス [Rosa chinensis semperflorens] が西洋に伝わり、その交配から、四季咲き性のバラが作出されたようです。

また庚申バラと、やはり原種のロサ ギガンティア [Rosa gigantea] の自然交配種ロサ オドラータ[Rosa Odorata]からは、甘いお茶の香りのティーローズ [Tea Rose] が生まれたと言われます。
こうしてチャイナローズから、四季咲き性、木立性、甘い香り、剣弁の特徴が付与されたオールドローズの品種が増えていきます。

この庭のホワイト ドゥシェス ドゥ ブラバン [White Duchesse de Brabant] は四季咲きで、立ち木性のオールドローズ。
手間を掛けなくても、1年中良く咲く上に、たおやかでエレガントなバラです。

有名な育種家の鈴木省三氏のお弟子さんがオーガニックで育つバラの造園を依頼され、原種やオールドローズで造園したと聞きます。
原種やオールドローズを上手に取り入れることは、人に環境に優しい庭造りになりそうですね、OLG!

モダンローズへ

前述のように、ラ フランスがハイブリッド ティー系統1号で、ここからオールドではなくモダンローズ。
ハイブリッド ティーのハイブリッドは交配の意味なので、ハイブリッド ティーの直訳はティーローズの交配種のこと。
このハイブリッド ティーは複雑な交配から多くの特徴を受け継ぎました。
ティーの四季咲き性や花型、花色、香りに、
ハイブリッド パーペチュアル [Hybrid Perpetual Rose] の耐寒性、強健性、
更に、ハイブリッド フェティダ [Hybrif Foetida] の黄色の色素などです。
作出された当時の人々のあったらいいな、という夢を盛り込んだバラのようですね。
生花店のガラスケースの中に並ぶ一輪咲きの大きな切り花用の品種はこの系統が多いそうです。
更にハイブリッド ティーから、フロリバンダ [Floribunda]  やラージフラワードクライマー [ Large Flowered Climber] の系統が作出されたといいます。

今では、世界中に3万~4万種のバラが存在するそうです。
育種家たちは、それぞれのブランドで魅力溢れるバラを誕生させてくれました。
ご存じイングリッシュローズも、育種家が様々なオールドローズとモダンローズの交配から作出したバラだそうです。

植物にとって花を咲かせることは、多くのエネルギーを要すること。
元々は、ほぼ一重の花の一季咲きだった原種が、品種改良で、大輪花、四季咲きで花つきも良くなったのですから、そのバラが多くの肥料を求めるのも尤もです。
人々の夢の実現のため、このようなバラが育種家たちによって作出される長い歴史があったのでしょう。

オーガニックで育つモダンローズへ

しかし、近年は人々のニーズに変化が起きているようです。
人に環境に優しい、オーガニックで育つバラ。
これは、OLG!の願いでもあります。しかも、大輪花、四季咲き性で花つきも良いバラ、というニーズ。育種家たちは、そうしたニーズにも応える強健種を次々に作出してくれています。
また、バラの栽培農園や研究機関などでも、盛んにオーガニックで育てる挑戦が行われているようです。

無農薬で育てると、病気や虫の攻撃に晒され、育たないバラもあるようです。
しかし、無農薬状態で数年経過すると、細菌や害虫への防御機構を発揮し始めるバラがあるのです。
植物の化学防御と言われますが、植物の中で細菌や害虫から自身を守る化学物質が生成されるのですね。
その物質は、ファイトアレキシン [phytoalexin] と呼ばれているようで、研究が進んでいるようです。

この庭も、できるだけ低農薬を心掛けて育ててきました。
肥料も過剰にならないように努めています。
その結果、ほぼ強健種中心の庭になりました。

更に、キッチンの生ごみから堆肥を作る試みも始めています。
まだ、バラへ自家製堆肥を施肥するところには至っていませんが、菜園で試して、様子を観察し、
時機を見てバラにも施せたらと計画しています。

まだまだですが、無理のない進め方で、人に地球に優しいOLGを目指していきますね♪

オーガニック栽培アイテム

なるべくオーガニックでバラを育てたいと願う方は、きっと少なくないでしょう。
一方、花の色や形や香りは、花粉を運んでくれる昆虫たちを魅了し、呼び集めますね。
また、土壌にはバラにとって有害な微生物も様々生息しています。

そこで、農薬を使わずにバラを守るアイテムをいくつかご紹介します。

弱アルカリの重曹水

人や動植物などへ害を及ぼすおそれがなく、農薬と同様の働きをするものを特定防除資材と呼ぶのだそうですが、重曹もその1つ。
ご存じの通り、重曹はお菓子作りなど料理に利用されたり、お掃除でも活躍する人に優しい物質ですね。
農林水産省もバラの灰色かび病やうどんこ病に対して、重曹の薄い水溶液が効くことを認めています。
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但し、その科学的根拠は示していません。

そこで、科学的に解っていることをいくつか調べてみました。
① バラの病気でもある灰色かび病の病原菌 [Botrytis cinerea Persoon] は、酸性のpH5ぐらいが一番病原性が高くなるのだそうです。
② うどんこ病を引き起こす [Oidium sp.] も 灰色かび病の[Botrytis cinerea Persoon] も糸状菌。
③ バラの黒星病を引き起こす [Diplocarpon rosae] も糸状菌で酸性の土壌で増えることが解っています。

概して糸状菌は土壌が酸性になると増え、アルカリ性に傾くと減るようです。
それに対して、重曹は弱アルカリ性。もしかすると、そのあたりが関係してるのかもしれませんね。

重曹水の作り方

農林水産省推奨の数値を参考にガーデニング向けに計算し直すと次のようになります。

水  1リットル  [牛乳パック大1個]
重曹 約1g     [小さじ1/2弱]

この重曹水1リットルを2~7㎡の広さに散布する

人に環境に優しい方法ですので、効き目はやはり穏やかで、顕著ではないことをご承知おき下さいね。

お腹にもバラにも納豆菌

ドライアイでお困りの方も多いのではないでしょうか。
その対策として、粘膜を構成するムチン [mucin] を摂取しようと、以前より納豆を食べる機会が増えました。
この納豆菌 [Bacillus subtilis var.natto]、腸内で善玉菌として働き、悪玉菌を減らすと言われますね。
何と、土壌内でも納豆菌は同様の働きをしてくれそうなのです。
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納豆菌は枯草菌 [Bacillus subtilis] の中の1つ。
この枯草菌の研究結果から、その優れた力をご紹介します。

枯草菌効果
① 抗菌作用
複数の抗菌物質を生産して、カビの菌をはじめとする病原菌を抑制、病害への防御力を高める。

② 栄養素を摂取し易くする
土壌の窒素、リン、鉄という植物に必須の栄養素を植物が取りやすい形態に変える。
その過程で、大気中の窒素を土壌に取り込んでくれる。

③ 根の発育を向上させる
生成される 2 つの揮発性有機化合物によって、根の成長を促進する。

④ 水分不足の被害を減らす
植物が持つ浸透圧保護力を強化して、水不足への耐性が高まる。

と、まだまだあります。
納豆菌を含む枯草菌はパワフル。
上手に取り入れれば、OLG, The optimum Little Garden!
黒星病は糸状菌というカビの菌で起きるので、納豆菌は黒星病対策になりそうです。
また環境の中にある栄養素を植物に取り易くしてくれるようなので、多肥を避けることもできそうですね。

この庭の納豆菌液の作り方と撒き方

① 納豆のパックやフィルムを1パック当たり100ml程の水で洗う
② 洗った水を集めて数日置く
③ 雨上がりの暖かい日にバラの根元に散布

気温が低かったり、土壌が乾いていると納豆菌は繁殖しないそうです。
黒星病は梅雨時に発生したりしますから、梅雨時の雨上がりに納豆菌液をあげると良さそうです。
植木鉢には、水で20倍ぐらいに薄めた希釈液を撒くといいですね。

健康に良いからといって、納豆を大量に食べてもかえって健康を害するように、もちろん、納豆菌液も適度がベスト。
撒いた後は、バラが納豆菌液で快適かどうか観察してあげたいですね。
バラが喜んでくれますように、OLG, The optimum Little Garden!        

殺虫剤になる唐辛子液

代表的な辛い食材の唐辛子。
その辛み成分のカプサイシン [Capsaicin] は、昆虫を含む無脊椎動物に対して摂食抑制作用があることが解っています。
また、ニンニクのアリシン [Allicin] という成分も害虫の攻撃から植物を守るそうです。

そこで、これら成分を木酢液で抽出し、バラの無農薬殺虫剤として使っています。
バラゾウムシやアブラムシ対策です。

この庭の唐辛子液

直ぐ使える唐辛子液

材料

唐辛子  5g
ニンニク 5g
木酢液  50ml
水    コップ2杯

作り方と撒き方

① 鍋にコップ2杯の水と唐辛子5g黒砂糖1mgを入れる
② ①を20分ぐらい弱火で煮る
③ ②の液が冷めたら、唐辛子ごとフードプロセッサーなどで細かく刻む
④ ③に摺下ろしたニンニク5gを加える
⑤ ④を目の細かい茶漉しなどで漉す
⑥ ⑤の漉した液に木酢液50mlを入れる 
⑦ ⑥の液大さじ1を水で500mlで薄め、週に1回程度スプレーで散布

散布回数はバラの様子をよく見て決めています。
散布後まもなく降雨があれば、散布後3日で再度散布。
散布後でもバラゾウムシが見られるときも週に2回散布など。
この庭では、週に2度散布した後は、バラゾウムシが気にならなくなるので、その後は散布間隔を開けています。

次に、長期保存出来る唐辛子液の作り方もご紹介します。
お茶の葉などを入れて使うお茶パックという不織布の袋をご存じですか?
適宜、そのような物を使うと抽出液だけ取り出せますね。

保存できる唐辛子液

材料

唐辛子  100g
ニンニク 100g
木酢液  1リットル

作り方と撒き方

① 唐辛子100gを縦2つに切り、種やへたも使う
② ①と摺下ろしたニンニク100gと黒砂糖2gをお茶パックに入れる
③ ②と木酢液1リットルを保存瓶に入れて、3ヶ月~1年ぐらい冷暗所で保存
④ ③の液を大さじ1を水で500mlで薄め、週に1回程度スプレーで散布 

黒砂糖は葉に付着しやすく、吸収しやすくするためのもの、コーヒーシュガーを使っています。
1mgはコーヒーシュガー小粒1個、2gは小25粒ぐらいです。

ご存じのように、唐辛子や木酢液などは人にも刺激物質ですので、散布の時には眼鏡や手袋、マスクなどを付けて下さいね。
散布は夕方が良いようです。
身近にある人に地球に優しいアイテムでバラを守っていきたいですね。
OLG, The optimum Little Garden!